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試験的なイラストぶろぐ
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対魔征伐係.204「残ったもの」


鳥の鳴き声が聞こえる。
聞き覚えのある鳴き声から察するに雀だろうか。
体中に感じる柔らかい感触で自分が今、ベッドの上で寝ていることが分かった。
何時もの朝の感覚だった。
(・・・何処だ、ここ・・・)
うっすらと目を開けるとすぐにここが何時もとは違う、自分の部屋ではないことが天井で分かった。
白く綺麗な天井、窓から入ってくる朝日で今が朝だということは間違いないことも分かった。
仰向けでベッドの上で寝ている。
ぼやける頭でもすぐに現状を理解するのにそう時間は掛からなかった。
(・・・生きてるのか・・・?)
あの時、アスラに刺された時・・・確かに確実に、死んだと思った。
よくテレビなんかでタレントが死んだかと思った、死ぬかと思ったなどと言っていたが・・・
あれらの言葉がどれほど陳腐で薄っぺらな言葉だったのかということが良く分かった。
あの時感じた恐怖感、死の感覚は何者にも例えようのないものだった。
(・・・ここは・・・病院か・・・)
とりあえずは眠気もないので、上半身を起こして辺りを探ろうと考えた。
だが・・・
「・・・ッ!!?」
上半身をベッドから離した瞬間。
腹筋に僅かに力を入れた瞬間。
腹部に信じられないほどの激痛が走る。
声にならない叫びをあげてそのまま仰向けでベッドへ再び倒れこむ。
「・・・成る程・・・生きてるな・・・」
腹部に感じた激痛のおかげでこれが現実だと言う事を分からせてもらえた。
あの時刺された傷口から体中を蝕むような痛みが広がっていく。
生きているとは言え、ロクに身体も動かせない状態だった。


「・・・ん?」
痛みも和らいでいき、軽く一息吐くとふと人の気配を感じた。
今までは寝起きと言うこともあり気がつかなかったが、痛みの所為で完全に眠気も飛んだ今になってようやく気がついた。
「・・・居たのか・・・」
ふと横を見ると、ベッドのすぐ傍にある机の上に突っ伏すように真妃が眠っていた。
(・・・月曜日・・・?)
そんな真妃の寝顔の横に月日、曜日が表示される時計が置いてあった。
その時計の表示では今は月曜の朝となっている。
(・・・おいおい・・・丸々一日以上は寝てたってことか・・・)
てっきり日曜の朝だと思っていた真司。
だが、実際は真司が刺されてから二十四時間以上は軽く過ぎていた。
(・・・まさか、ずっと居たのか・・・?)
そうなると自然と疑問に思うことがある。
真妃はいったい何時からここに居たのかということだ。
こうして眠っていると言うことは昨晩からは居たのだろう。
もしかすると土曜日から付き添っていたのかもしれない。
「・・・まぁ、そりゃ流石にないか・・・」
言いつつ真妃の頭にそっと手を伸ばす。
身体は動かせないものの、四肢は動かせる。
感謝の意味も兼ねて真妃の頭を軽く撫でる。
「・・・」
「・・・ん?悪い、起こしちまったみたいだな」
薄っすらと眠そうな顔をして真妃は目を開くと、ぼうっとしたまま真司の顔を見つめている。
「・・・しん、じ・・・?」
「おう、おはよう」
まるで宇宙人か幽霊にでも会ったかのような信じられないと言った表情をしている真妃。
そんな真妃とは対照的に何時もの調子で朝の挨拶をする真司。
「・・・・・・」
「・・・どうした?」
そんな驚きの表情のまま固まって動かなくなってしまった。
寝起きでまだ半分夢の中なのではないか、そう思った矢先・・・
「・・・ふぇ・・・っう・・・」
「おぉい!?ど、どうした・・・?」
突然、ぎゅっと瞑った真妃の目から大粒の涙がぽろぽろと雫となって流れ落ちる。
予想外の展開に動揺してしまう真司。
「だって・・・ずっと・・・」
「・・・あぁ、いや・・・まぁ・・・少し寝すぎたかもしれないが・・・」
まるで子供のように泣き続ける真妃の頭を撫でながら言葉を掛ける。
確かにあんな風に刺されて一日以上目を覚まさなければ心配されてしまっても仕方が無い。
「・・・まぁ、もう大丈夫だから安心しろって」
「・・・ん」
本当は抱きしめたい気持ちではあったが、身体がコレではそれも出来ない話である。
已む無く安心させるように手で優しく頭を撫でる。
「・・・本当に、良かった・・・」
「・・・あぁ」


1p642.jpg


ようやく落ち着きを取り戻して来た真妃は真司の手を取り、その体温を確かめるように自分の頬に当てる。
心から安堵したような笑顔を見せる真妃の姿を見て真司もようやくホッと一息つくことが出来た。


・・・


真妃から色々と聞かせてもらった。
しばらくは入院が必要なこと。
その間、クラスメイトにはインフルエンザに罹ったと郁が説明するとのこと。
これにより友人が家に来て怪しまれることもない。
アスラとネクシブの両名はあれ以来行方は掴めていないということ。
真司の折られた刀の代用品としての刀が近日中に送られてくるということ。
この病室は係りの人間の病室と言うことで、特別に一人で貸切で使えるということ。


「真司は何か欲しいものとかある?」
「・・・欲しいもの?」
突然そう言われても急には中々出てこない。
「入院中って暇になっちゃうじゃない?だから、本とかゲームとか」
「あー・・・そうだなぁ・・・家から後で適当に持ってきてくれると助かるな」
「ん、それじゃあ後で私が一端家に帰るときについでに持ってくるわね」
真妃は何が嬉しいのか、何時もよりも嬉しそうな笑顔に見えた。
「・・・って、今日は平日だろ?学校はいいのか・・・?」
「いいのよ、今日くらいはここに居るから」
学生の言葉とは思えなかったが、そう即答してくれると素直に嬉しくはあった。
「今日くらいって・・・何時から居たんだ?」
「・・・一昨日」
「・・・」
「・・・」
思わず会話が止まる。
「で、でも、勘違いしないでね?ちゃんとお風呂と着替えだけはしてたんだからね!?」
「・・・いや、そういうことではなくてだな・・・」
真司が驚いている理由はそこではなかったのだが・・・
これについてコレ以上どうこう言うのも野暮だと思い、ここで止めておくことにした。
「・・・あぁ、そういや・・・入院って初めてなんだが・・・心配事があったわ」
「・・・心配事・・・?」
突然の真司の発言に不安そうな顔になる真妃。
「・・・しばらくは入院なんだろ?」
「・・・そう聞いているけど・・・」
深刻そう、とても真剣な顔で呟く真司。
そんな真司を見て、真妃も只事ではないと感じたようだ。
「・・・下の世話とか・・・してもらえるのか・・・」
「・・・・・・」
会話が、と言うよりも・・・その場の空気が止まった気がした。
「・・・なんで・・・真司は二言目には!そんな!こと!ばっかり!なのよッ」
「あだだだだだだッ!!?」
何故か真妃が頬を染めながら真司の頬を力強く抓ってくる。
「おま、怪我人に手をあげるなよ!」
「馬鹿なこと言うから悪いんでしょ!」
ようやく抓りから解放され、じんじんと痛む頬を摩る真司。
「馬鹿なことじゃないぞ!?今まで定期的に発散できていたものが突然何日も我慢しなくてはいけなくなってみろ!身体に悪影響を及ぼすぞ!」
「・・・そ、そういうものなの・・・?」
思わず口からデマカセを勢いで言ってみた真司。
だが、そんなデマカセを怪しみながらも信じている様子の真妃。
「・・・そう言うものなんだ。だから・・・是非」
「・・・」
真妃は悩んでいる様子である。
正直、溜め込んだところで欲求不満になるくらいで身体に悪影響が出るわけではない。
唯一あるとすれば、欲求不満が溜まると可愛い看護婦さんなどが居た場合、どうするかわからなくなる。くらいのものだった。
「・・・よ、夜とかだったら・・・別に・・・」
「・・・マジで?」
真妃の思いがけない承諾の返事に思わず笑顔で確認をする真司。
「もう!何度も聞かないでよ!」
「って、何処行くんだ?」
「飲み物でも買ってくる!」
言いつつ真妃は真っ赤になりながら慌てて病室から小走りで出て行った。
慌しい空間はまた静かな病室へと変わったのだった。
そんな空気の変化と同様に、真司の表情も厳しい、浮かない表情へと変わっていた。


(・・・生きてはいる・・・が・・・)
右手を軽く目の前へ突き出す。
あの時の光景を鮮明に思い出す。
自然と体中にあの時の感覚が蘇ってくる。
右手は小さく震えている。
(・・・くそッ・・・)
そんな震えを強引に抑えるように右手を力強く握り締める。
こうして大人しく寝ていれば傷口からの痛みは少ない。
だが、寝ていても、真妃と話していても・・・
あの時感じた恐怖は身体に、心にしっかりと刻み込まれたまま、今も真司を苦しめ続けていたのだった。



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シンヤ(nanpP

Author:シンヤ(nanpP
・東方では始めて会った時からレミリア一筋。
・生粋の黒ニーソスキー。
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