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東方夢幻能RE/第14話「永遠亭へ②」


-永遠亭-


二度目の来訪となる永遠亭。
相変わらずの昔ながらの日本家屋である。
古びた感じがする屋敷ではあるが、雑草が生えていたり、くもの巣が出来ていたりということはない。
庭も家屋もしっかりと手入れが行き届いている。
家屋自体がだいぶ古く、改築などはしていないのだろう。


「すいませーん」


呼び鈴などもないので、前回同様、声を出して人を呼ぶ。
すると、すぐに玄関の奥から足音が聞こえてきた。
これもまた前回同様に聞き覚えのある、体重の軽い者が小走りで近づいてくる音だった。


「はい、どちら様…」
「お久しぶり」


玄関の戸を静かに開けて姿を現した鈴仙に何時もの調子で気さくに声を掛ける。
特に嫌な顔こそしなかった鈴仙だが、別段笑顔で迎えてくれるわけでもなかった。
とりあえず、今回来た目的を告げる。


「…分かりました。ではどうぞ」
「邪魔します」


ちゃんとした目的があって来たと分かると、すぐに屋内へ案内してくれた。
鈴仙に案内されて二度目の永遠亭へと足を踏み入れる真司。


相変わらず、うさみみが特徴的な鈴仙。
性格も小悪魔のように素直で大人しく、美少女である。
さらにデフォルトでうさみみ装備と来れば是非ともお近づきになりたいと思うのは自然の理だった。
だが…
前回も感じたことだが、鈴仙は明らかに真司と距離を置いていた。
会って二度目でお近づきと言うのも軽すぎるとは思うが、幻想郷では割と誰も彼もすぐに親しくなれる者ばかりだった。
そんな場所では鈴仙のように頑なに他人と一線を引いている者は珍しかった。
人見知りが激しいというよりも、警戒心が強い、他人を信じないと言った感じに見える。


「では、ここで少し待っていてください。師匠を呼んできますので」
「あ、了解~」


鈴仙について色々と考えていると、屋敷をしばらく進んだ庭が見渡せる縁側で待たされることになった。
真司をそこに残し、小走りで廊下の先へと消えていった鈴仙。
一人残された真司は、大人しく庭でも眺める…
そう思った矢先、廊下から見て庭とは逆側。
襖が閉められている部屋の中から人の気配がした。
まだ二度目の来訪である。
まだまだ知らない居住者が居てもおかしくない。
ここでぼんやりと庭を眺めているくらいならば新しい知り合いを作った方がいいと判断した。


「すいませーん」
「あら…?久しぶりの顔ね」
「・・・」
「…?」






襖を開けるとそこには知った顔の少女が居た。
着替えの最中だったようだ。
思わず固まる真司だったが、当の少女…輝夜は眉ひとつ動かさず、驚いた様子もない。
それどころか着替えを急ぐことも、隠すことも無かった。
極々自然に、何事も無かったかのように振舞っている。


「人の着替え中にいきなり入ってくるなんて…夜這いかしら?」
「…今はまだ昼間だ」


輝夜はゆっくりと着替えを進めながら愉しそうに呟く。
真司も冷静に、慌てることも無く返事をする。
内心ではかなり焦っていたのだが。


「そう…?昼間からなんてお盛んね?私は一向に構わないのだけれど」
「…折角だが今回は別件で来たんで…また今度な」


輝夜はとんでもないことを言いつつ微笑を保ちながら真司の方へ足を向けた。
冷静に振舞い、内心では大慌てで部屋を出た真司。


「…はぁ…」


襖を勢い良く閉めると深い溜息を吐く。
知り合いの異性の中では苦手な異性と言えば紫が真っ先に思い浮かぶ。
だが、輝夜も違う意味で相当に苦手だった。
特に嫉妬深く、お仕置きがとても恐ろしい恋人を持つ真司にはある意味で紫以上に会いたくは無い異性と言える。
逆に言えば、だからこそ今まで輝夜の手に染まることはなく、一歩前で踏みとどまっていられたのだが。


「…どうかしたんですか?」
「あ、いや…なんでもない」


疲れた様子で立ち尽くしていた真司に戻ってきた鈴仙が声を掛けてきた。
苦笑いを浮かべながら、早々にその場を後にした真司だった。





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Author:シンヤ(nanpP
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