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(ここら辺でいいかな・・・)
空を見上げればまぶしい太陽が光り輝く夏の正午。
日陰へ入れば屋上ならではの強めの風が頬を心地よく過ぎる。
いつものように昼食を取るために屋上へ場所取りをしに来ている恵理佳。
丁度よさそうな日陰の場所を見つけ、二人が購買から戻ってくるのを座りながら待つことにした。
いつもならば購買へ行く二人はじゃんけんで決めるのだが、今回は本日行われたプールでの一件で陽那と霧月に決まっていたのだ。
昼食を取るパターンは大きく分けて三つに分類される。
一つ目は教室で取るパターン。
主に家から弁当を持参してきた生徒たちが該当する。
購買へ買いに行ってから教室へ戻ってきて食べる生徒も少なからず居ることは居る。
二つ目は食堂で取るパターン。
弁当を持ってきていない生徒や食堂のメニューが気に入った生徒たちが該当する。
弁当を持ってこれる生徒でも、リーズナブルで多種多様なメニューがある食堂での昼食の方がいいと言う生徒も多数居るのだ。
稀に購買で買って食堂で食べている生徒も居る。
三つ目は屋外で取るパターン。
外での景色や空気を吸いたい、気分転換も兼ねて外で取りたいと言う生徒たちが該当する。
恵理佳たち三人もこのパターンである。
陽那がクーラーなどの機械的な空気があまり好きではないこと。
恵理佳や霧月が人ごみが苦手なこと。
それぞれの理由によって、いつもは屋上で取ることにしていた。
「お待たせ~!」
屋上から見える春とは様変わりした夏の景色を眺めていた恵理佳に元気な声が掛けられる。
「おかえ・・・り・・・」
労を労って笑顔で迎えようとしていた恵理佳の表情が強張る。
「よう、場所取りご苦労さん」
「・・・なんで、兄さんが居るの・・・」
「・・・随分だな」
陽那と霧月の間に何故か真司も居た。
手には二人と同じく購買で買ったと思われる品物が入った袋をぶら下げていた。
「購買部でたまたま会ってさ」
「折角だったから」
二人が軽く経緯を説明する。
二人と真司は顔見知りである。
真司だけでなく、凌空とも恵理佳を通じて知り合っていた。
「・・・青砥先輩はどうしたの・・・?」
「凌空なら全力で昼寝中だ」
購買から戻ってきた二人、そして真司は恵理佳が座ってキープしていた日陰の場所に腰を下ろす。
「・・・それは分かったけど・・・」
「ん?どうした?」
「・・・別に・・・」
何故か真司の座り位置は二人の間だった。
「どうせだったら可愛い子の傍で食べたいのが男ってもんさ」
いつものように全くの他意も裏も感じさせない笑顔であっけらかんと言ってのける。
「霧月ちゃんは相変わらず可愛いな」
「・・・どうも・・・」
言われなれていないのか、挨拶代わりの軽い世辞にも頬を赤らめてしまう。
「陽那はまた少しでかくなってないか?」
「成長期だからさ。日比谷先輩、また後でひと勝負しない?」
「お、いいねぇ。また俺の勝ちだろうけどな」
「今度はそうはいきませんよ?」
陽那と真司は何度かスポーツ関連で勝負をしていた。
恵理佳と同じくスポーツが得意で、恵理佳よりも運動に関しては情熱を燃やしている陽那。
真司にもとばっちりが来たのだ。
売られた喧嘩はなんとやら。真司も挑戦を受け、男と上級生の維持で今のところ勝ち越している。
(・・・はぁ・・・)
そんな話で盛り上がっている目の前の二人(と一人)を見て、思わず心の中で深いため息を吐く恵理佳。
・・・・・・
きーんこーんかーんこーん・・・
談笑し、食事をまったりと取っていた四人の耳にスピーカーから午後の授業開始五分前の予鈴が聞こえてきた。
「・・・ん?そういえば・・・次は移動教室じゃないか・・・」
通常ならばこの予鈴を聞き、教室へ戻れば十分に間に合う。
だが、移動教室となると話は変わってくる。
場所にもよるが、急がないと間に合わないケースがほとんどだ。
真司も例外ではなく、まだ少しだけ残っていたパンを無理矢理口に詰め込んで、ジュースで流し込む。
急いで立ち上がり・・・
「邪魔したな、また今度会おうぜ」
最後に二人に挨拶をし、その場を去ろうとする、が・・・
「兄さん、ちょっと待って」
「んぁ?何だよ?」
後ろから恵理佳に呼び止められ、勢いが止められる。
急いで教室に戻らねばならない真司は雑に返事をする。
そんな真司に恵理佳はその場を立ち上がり、近づいていく・・・そして
「そんなみっともない顔で教室に戻らないでよね」
ポケットから取り出したハンカチで真司の口の周りを綺麗にする。
何か付いていたようだ。
「・・・らぶらぶ・・・」
「いつも二人は仲良いよなぁ」
思い切り楽しそうに呟く霧月に、思い切り明るく呟く陽那。
「・・・早く戻らないといけないんでしょ?」
「あぁ、そうだが・・・?」
二人(一人)に冷やかされ急に表情が険しくなる恵理佳。
「ほら、兄さん早く!」
手振り身振りでそこから早く出て行ってとアピールする。
訳も分からないまま屋上から階下に繋がる階段を早足で下りて行く真司。
(・・・俺、何かしたのか・・・)
自分の行いを振り返りつつ、疑問を抱えつつ教室へと戻る真司だった。
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